ディテールについて
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こんにちは、デザイナーの林です。
先日追加された新作事例105 lushのディテールについてお話しします。
設計目線で細かい部分をお話しする機会はあまりないのですが、
今回も施主のK様と対話を重ね、楽しく住まいづくりをさせて頂いたので、私の思い出としてもご覧いただけると嬉しく思います。
ご主人様は設計職に就かれている事もあり、
私と同じくらい寸法へのこだわりを持ってくださっていました。
打合せ中にも度々「ここはなぜ〇〇mmなんですか?」と図面に記された寸法や、選定した材質の理由を聞かれました。
勿論私も理由を持って作図しているので、その意図まで深くお話できたのは嬉しかったです。
そんなK様との対話から生まれた、ディテールの数々をご紹介します。
まず、タイル目地について。
K様邸では、床をタイル張りにしています。
フローリングよりも目地のラインがはっきり出る分、そのラインが良くも悪くも作用してきますが
今回は「玄関から窓に向かって一直線に視線が抜ける」ということ、そして「キッチンがすっと伸びる美しさ」を意識していたので
長手方向の目地ラインは視覚的に大きく影響すると感じました。
縦横すべての目地を意識しだすと、実用的な寸法を犠牲にしてしまうのでやりすぎ注意ですが
今回は玄関~キッチン、この長手方向一本のラインだけは死守したかったので、大工さん左官屋さんにもとても気を遣って頂きました。
このラインのおかげでこのお家で唯一の間仕切りになっている寝室とLDの境界もキリっとしました。
K様邸は洗面台もタイルです。
こちらもタイル小口が見えてくるだけで繊細さに欠けてしまうので
留め加工を施し、凛とした印象になるようにしました。
選定したタイルも上品な表情なので、この収まりが似合っていると思います。
もっとカジュアルだったりポップなタイルなら小口を敢えて見せる方がラフで似合うかもしれませんね。
次はこの家のメインでもある突板の壁面収納。
こちらは、突板の樹種選定から、台輪の高さ、取っ手の作り方など、それはもうとにかく施主様も私も悩みました。
樹種はどれにするか、征目にするか板目にするか、ツヤをどのくらいにするか・・・
何度も打合せした結果、モダンにならず自然に近い印象になるよう、ホワイトオークのツヤを抑えた板目に。
台輪の高さも、広範囲の壁面なので重たくならないよう浮遊感を出す為、少しだけ高さを持たせました。
(あと開ける時地味に足の甲を引っ掛けて痛いことがあるので、それも考慮して)
取っ手は、ストイックになり過ぎないように少しだけ可愛らしさを取り入れたくて
小さな25㎜×25㎜のスチールの取っ手を製作しました。
壁の塗装と同じ色で焼き付け、デザインもごくごくシンプルに。主張せず控えめにそこに居てくれる感じに。
毎日触る時に小さな可愛さを感じます。
もう一つ、毎日触るところと言えば、スイッチやドアレバーです。
丸いセラミック製のスイッチが凛とした空間に柔らかさを加えてくれています。
その隣にあるトイレのドア。UNIONの台座のないステンレスレバーは個人的にも使ってみたかった一品。
このスイッチとドアレバーのコンビが良いバランスになっていて嬉しい。
リノキューブではお馴染みですが、枠なしの建具の収まりは凛とした空間作りには外せない要素だと感じます。
巾木や枠の影響力は結構ありますよね。
勿論それを実現してくれる職人さん方の腕あってのことですが。感謝です。
また、トイレの中はK様がご購入された3RD CERAMICSさんとBULLPENさんコラボの
ドーナツランプを付けたいとお聞きし、壁の塗装をランプのように色分けしてみました。
照明や家具ありきで作るのもとても楽しいです。
そして最後に、メインとなるキッチンへのこだわり。
緑の見える窓の横で優雅に構えるキッチン。天板はできるだけ長く、ノイズのない収まりを目指しました。
ステンレス天板は薄すぎるとストイックになりすぎるのでほどほどに。
大判タイル張りの壁がのぺっとしないよう、天板厚と同じ幅のさりげない目透かしを入れて抜け感のバランスも熟考しました。
キッチン上の照明器具もステンレスで造作させて頂きました。
「すっと伸びる美しさ」の手助けしてくれています。
照明も一緒に作れるといいなと常々思っていたので、打合せ中に「良い照明がなくて」というK様に対して
「造りませんか?」と言った私はK様が見た中で一番目がキラキラしていたらしいです。笑
そんな私に乗ってくださったK様に大感謝です。
非常に細かいところですが脱衣室の上がり框もステンレスで作りました。
上がり框って意外と存在感あるので、こちらもシュッとした印象にしたかったので。
材質へのこだわりなど、もっともっと話せば尽きないですが、長くなりすぎるのでこのあたりで。
もっと聞いてくださる方がいればぜひお声がけください。笑
リノキューブの施主様はディテールまで楽しんで頂ける方が多く
普通なら「細かすぎて伝わらない〇〇」になるであろうところを気付いてくださるので
とてもありがたいですし、楽しく設計させていただいています。
日々レベルアップして、より良い家づくりを目指していますので、細かいところまで楽しみたい方ぜひお越しください!