訪問会を終えて
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こんにちは、デザイナーの高木です。
少し前になりますが、case.082【margin】の訪問会を開催させていただきました。
実際に生活している空間を見学していただく機会は少なく、
タイミングが合わず来られなかったという声もいただきましたので、
写真では伝わりにくく、見学に来てくださった方たちが
特に興味を持って下さった部分を中心に、少しばかりお話しさせていただきたいなと思います。
生活の工夫やリノベーションの楽しさ、ディテールへのこだわりから生まれる美しさも
感じ取っていただけたら嬉しいです。
特に質問が多かったのはキッチンまわりについてでした。
配管やダクト等、設計上注意が必要な部分が多い水廻りですが、
逆を返すとそこをどう料理するかが、設計としての腕の見せ所だったりして
いつもワクワクします。
K様のお住まいは、もともとI型のキッチンからシンクとコンロの位置を大きく変えず、
L型のシンク台とI型のコンロ台を計画しました。
シンクはダイニング向きにオープンとし
足元のごみ箱置き場はダイニングからもリビングからも隠せ、
油ハネが気になるコンロは壁向きで調理でき、
2型としたことで、回遊性も確保した開放的なキッチンとしました。
冷蔵庫などの家電はすぐ横のパントリー内に置き、インテリアにおける生活感を軽減しました。
そこから洗面室→玄関ホールと繋がり、ここも回遊できる導線としています。
細かな部分ですが、
躯体の壁の段差をコンロ廻りの奥行きの必要な部分に活用し計画。
タイル幅に合わせて段差も微調整しています。(高さはレンジフード合わせ)
タイルは小口を見せないようトメ加工。
タイルは種類によりますが、どう納めるかで印象がガラッと変わります。
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ダクトを隠すために必要な下り天井はタイルの上下をカットせず収まるよう計画。
奥行きは袖壁に奥行きを合わせてすっきり見えるようにしています。
そんな事を一つ一つ考えながらストイックに詳細図を描いているので
工事中ピタッとくると、良しっとガッツポーズしたくなります。笑。
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ちなみに、コンロ側の作業台をダイニング側で続けて計画しているのですが、
ここも、すごく便利だと話が盛り上がった部分の一つです。
調理時は作業台として使うこの部分もダイニングのすぐ横にくるので、
キッチン感が強くならないよう、注意しました。
ちなみについでにですが、ダイニングテーブルに必ずおかれるティッシュペーパー。
これを隠すため、テーブル裏に固定するケースを使っているそうです。
これはもまた生活感を隠す便利グッズですね。
また、収納扉のパネルは框のデザインを採用しましたが、うるさくならないよう框の中に手掛けを隠して彫り込む設計としました。
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これまた、ちなみにですが、ワインセラーの横の引出はワイングラスを入れる仕切り付です。
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リビング床のフローリングとダイニングキッチン床のタイルの貼り分け部分は、
壁のコーナーとキッチンの蹴込にラインが揃うよう注意しました。
意匠設計時ではわからない部分も素材が確定してから平面図に戻り、
ミリ単位で修正します。
線を減らすには工夫が必要ですか、ここで美しさが決まると言っても
過言ではないので、いつもじっくり図面とにらめっこします。
線の数を減らし、ラインをそろえると凛とした美しい空間となり、
逆に、太くランダムにラインが入るとにぎやかな印象になります。
重要な部分だと常に意識して計画しているので、
ラインの魔術師なんて言われる日が来るよう日々精進していきたいと思います。笑。
他にも諸々と。
リビングドアの両サイドのガラスは奥まで続いているように見せたくて
壁との境目に枠をなくすディテールとしました。
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また、壁の色は同系色で3色使いしています。
シンプルにすっきりと仕上げる場合、選択する色や素材もシンプルなため、
ノペッとしないような工夫が必要で、そのための一つのです。
見学に来てくださった方が、この家なんか深みを感じる!と言って下さり、
なるほど、この色使いを深みと感じ取って下さったのか。と感激したので、
あえて使わせてください。
そう、深みが出てます!
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長々と書かせていただきましたが、
まだまだたくさんの想いがギュギュっと詰まっています。
一つ一つ、一か所一か所、使い勝手やデザインについて打ち合わせをし、
思い出のつまった我が子のように大切にしたい住まいと思ってもらえたら
うれしいなっと日々感じております。
実際に住んでいる中で開放いただいた訪問会。
楽しんで開催に賛同してくださったK様、本当にありがとうございました!